お笑いトリオ「グランジ」の遠山大輔さんは、ラジオの中で開かれる「未来の鍵を握る学校」を掲げる番組「SCHOOL OF LOCK!」(以下、SOL)で「とーやま校長」として、昨年までパーソナリティーを10年間務めました。その後も、リスナーたちとの交流が続いています。「ラジオの学校」に通う「生徒」たちへの思いを改めて語ってくれました。
昨年3月に、10年間務めたSOLの校長を卒業しました。そのときに「リスナーから校長への手紙を募集して、校長が手紙を読んで思ったことを1通ずつ返信する」という企画をしたんです。結果、集まったのは3640通。返信の途中状況を「××××/3640」とツイッターに書いてるんですけど、2千通を超えたときに「なかなか異常なことやってるな」と自覚しました(笑)。去年の4月から毎日少しずつ書いて、今年の3月いっぱいに終わらせたかったんですけど、今のペースだと終わらなさそう。
毎日2時間の生放送でリスナーと電話をつないで話をしてきましたが、1日に多くても4~5人なんです。もしかしたら僕に伝えたいことがあった子たちは、僕が番組を辞めたらその手段がなくなるわけで、この企画を始めることになりました。局の人は「名前とひとことで大丈夫ですよ」と言ってくださったんですけど、「さすがにひとことで返せるような手紙じゃないよな」とその瞬間に思いました。
コロナへの不安
手紙の8割は10代の子たち。たぶん日本に新型コロナウイルスの影響が本格的に広がりだした2020年3月の上旬から中旬くらいに書かれた手紙で、3年生は「卒業式を縮小してやりました」とか「卒業式できませんでした」とか。2年生の子は「部活の大会が中止になっちゃいました」「この先どうなるかわからない」。あと、SOLを聴き始めたきっかけはほとんどの人が書いてくれました。「うるさい男2人がしゃべっていて、聴いてみると面白かった」とか、「親やきょうだいに紹介された」とか、「好きなアーティストが出てたから」とか。そしてラジオを聴く前と後で自分はこういう気持ちになれました、というのが多くて。
学校生活や友達関係の悩みや迷いを書いてくれている人もいました。でも、今返事を書いても10カ月ぐらいの時差が出ちゃっているので、僕なりに一応答えは書くんですけど、最後には「解決してたらごめんね」と一言添えてます(笑)。
年配の方からの手紙も来ていて、高確率で涙を流してます。「自分は10代ではないし手紙なんておこがましいと思ったんですけど、どうしても書きたくなった」という60代の方とか。そういう思いや葛藤がありながら送ってくれた事実がうれしい。「初めて人に手紙を送ります」という10代の子もいて。なかなかカロリー使うと思うんですよ。手紙書いて、便箋(びんせん)に1枚の子もいれば10枚の子もいて。封筒選んで、切手買って、貼って、ポストに入れるって、結構な労力じゃないですか。「校長をやってきた10年間はそういうことだったんだな」という意味を、そうした手紙たちからもらっています。校長を卒業した今も、夜9時58分くらいになると家のテレビの音量をゼロにして、いつの間にかラジオコンポの周波数を80.0メガヘルツ(キー局のTOKYO FMの周波数)に合わせている自分がいます。
10年前は怖かった
2代目校長に就任したばかりの僕は、10代と向き合うとか以前に、全国ネットでしゃべるという経験がなかった。言葉を発してはいるんですけど、気持ちや魂が乗っていないのが自分でもわかるんです。わかっていてもうまくできない。それがもうつらくて。ずっと放送後は反省会の日々でした。全国でいろんな人が聴いてるって考えたときに、「どうやったらいいんだろう」と本当に怖かった。校長なのに、学校に行くのが本当に嫌だった時期がありました。
でもそれから10年経ったいま、こうして手紙の返事を書いているのがまったく苦じゃない。番組を卒業してもこうしてリスナーとつながれていることがうれしい。ただ41歳なので、肩と首、背中を始め全身に2千通ぶんのガタがいま来ています(笑)。(構成・大野択生)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル